未完成交響楽
貧しいシューベルトがギターを質入れすると、同情した質屋の娘エミーは規定以上の金にゲーテの詩集を添えて渡す。小学校で教えながら、音楽の勉強を続ける彼は、ある日、算数の授業中、数字が音符となり、子供たちが『野バラ』を唄う幻をみる。生活を憐れんだ友人に誘われ、彼は侯爵夫人の夜会に出席、後に交響曲『未完成』として知られる曲をピアノで披露する。弾くうちにインスピレーションが沸いた所を、フィアンセの耳打ちに笑い出した夫人の姪に腹を立て、演奏を止める。これを夫人は咎めるが、同時に姪の無礼を侘びる。暫くして、ハンガリーの伯爵から音楽の家庭教師に招かれた彼は行って驚いた。その生徒こそ先日の姪っ子カロリーネ。彼女は彼の毅然たる音楽への姿勢に共鳴し、教わるうち恋に落ちてゆく。しかし、彼と結婚すると言う娘を父伯爵は当然許さず、シューベルトは罷免される。それから数カ月、結局、親の決めた相手に嫁ぐカロリーネだったが、その華燭の典にシューベルトも招かれ、『未完成』をピアノで弾くと、やはり途中でカロリーネが慟哭の挙げ句、失神してしまう……。