都会という港
(C)KADOKAWA 1958
大阪船場の綿布問屋沢田安商店の娘・千佐登は商用で東京へ来た帰りの汽車で、岡崎証券の社長と同席し、話をしていると、その話に割りこんできた青年があった。その見ず知らずの男が忠告をしたのだ。あなたもヘマをすると高級パン助になりかねないとまで言った。彼女は営業不振の店のために、金策に廻っていたのだ。岡崎は名代の漁色家で、融資を条件に彼女をものにしたい下心だった。そのことを言ったのか。男は船場の家にも押しかけてきた。東京の興信所の調査部長・古橋修助という。強引に沢田安に泊りこんだ。千佐登は岡崎に白浜の宿へ連れて行かれた。五十万の金と交換条件に。白浜で千佐登は胃ケイレンの仮病をつかって、何事もなかった--。