ふきげんな過去
(C)2016「ふきげんな過去」製作委員会
毎日が死ぬほど退屈でつまらない果子。ある夏の日の午後、果子たち家族の前に、18年前に死んだはずの伯母・未来子が、突然戻ってきて告げる。
「あたし生きてたの」
北品川にある古びた食堂――エジプト風豆料理屋『蓮月庵』を営む祖母サチと母サトエと、なにもしない父タイチは、未来子との奇跡の再会に慌てふためき涙している。そんな家族の様子を、果子は小学生のいとこのカナと冷めた目で見つめる。
未来子は、果子の母サトエの姉で伯母だ。果子が赤ん坊のころ爆破事件を起こした前科持ちで、死んだはず…だった。だが、未来子はピンピンして生きている。爆弾作りに生きがいを感じ生業にする未来子にとって、死んだままでいることで都合が良かったという。
「しばらく匿ってよ」
戸籍もなく何かに追われているらしい未来子。家族は果子の部屋に未来子を居候させようとするが、果子は納得いかない。しかも父と未来子が何やら怪しい関係にも見える。母も未来子に対して気まずそうだ。突然現れた未来子がもたらした家族の不協和音と、全体的に図々しい彼女に苛立ちを隠せない果子。だが果子は、いみじくも未来子の言葉に救われる。
「みんな寂しいんじゃない? 一人で居ても家族と居ても」
実は果子は、家族に対し微妙な違和感があった。さらに同級生とのささやかなトラブルを抱えており、鬱屈とした夏を過ごしていた。商店街の喫茶店に通っては、その店に出入りする黒い帽子を被った謎の男・康則を観察することで、退屈をしのいでいた。彼だけは、ここではない世界へ連れて行ってくれるのではないかと空想しながら。
「叔母さん、なんで死んだの?」
そう問いかける果子に未来子は応えた。
「あんたと同じでつまらなかったの」
見えるものばかり見ても仕方がない、という未来子に、眩い生き生きとした世界を見てしまう果子。そして自分が本当の母親だというが…。