ハローゼア
音楽が大好きなのに、歌声に酷いコンプレックスを持つ実は、実家の牧場を手伝いながらホルスタインにギターの音色を聴かせるだけの日々を送っている。
彼は普段は気弱な性格だが、「つば付きの帽子を深くかぶった時だけ物事に動じなくなる」という妙な特徴がある。
実はひょんなことから、冴えない中年の照明技師・戸田を巻き込み地元のホールで「観客ゼロの一人ライブ」を敢行する変な女、有希と出会う。 彼女の画策(?)によって人前で演奏する楽しさを知った実は、やがて有希とデュオを結成、本格的に音楽活動を開始する。
かつては人気バンドのボーカルだった有希、卓越したギターテクと特異な歌声を持つ実。この二人の活動はすぐに地元で注目され始め、一時は順風満帆であるかのように思われたが、彼らを待ち受けていたのはあまりにたくさんの「壁」だった。
そして二人が窮地を迎える中、「実とつば付き帽子の関係」、「有希のバンド解散の理由」、「戸田の知られざる過去」、それらの謎がひとつずつ、明らかになっていく。