天国の本屋 恋火
オーケストラをリストラされたピアニスト健太(玉山鉄二)は、その夜、ヤケ酒で酔いつぶれた。その健太を怪しげなアロハシャツの男が見ていた。目をさます健太。そこは見覚えのない場所、天国の本屋だったのだ。あのアロハの男、ヤマキ(原田芳雄)が店長で、サトシ(新井浩文)と由衣(香里奈)という若い二人が店員だ。健太は短期アルバイトで天国に連れてこられただけだという。あっけにとられているうちに仕事が始まり、翔子(竹内結子)が朗読の依頼にやってきた。健太が頼まれた本を開くと、そこには書きかけの楽譜があった。香夏子(竹内結子・2役)は、祖母の幸(香川京子)の家でなつかしい浴衣に袖を通していた。それは12年前に死んだ叔母、翔子の浴衣。二人で浴衣を着て、花火大会に行くのが楽しみだった。だが将来を期待されたピアニストだった翔子は若くして亡くなり、その頃から花火も上らなくなっていた。町の長老から“恋する花火”の伝説を聞いた香夏子は、花火大会の復活を計画する。だが、恋する花火を作っていた瀧本(香川照之)は、ある事故がもとで花火師をやめていた。天国では、翔子の音符に引き付けられていた健太が、彼女の家を訪ねていた。翔子は、健太が幼い頃にあこがれ、ピアニストを夢見たきっかけとなった人だった。しかし、翔子は花火の暴発事故をきっかけにピアノが弾けなくなっていた。書きかけの音符は、未完成の組曲の10曲目、タイトルは「永遠」だった。健太は天国にいる間に、この曲を完成させようと決意する。地上では花火大会が本番を迎えていた。そして香夏子は恋する花火が上ることを信じていた。同じ頃、天国では、健太が翔子とともに最後の1曲「永遠」を完成させようとしていた。天国と地上。交わることのないかに見えたふたつの場所に、そのとき、同じ旋律が流れ出した。