花
突然動脈瘤で倒れた野崎は、会社を辞めてだらだらと毎日を過ごしていた。彼は初老の弁護士鳥越の、日本橋から鹿児島の指宿までわざわざ車で行くという風変わりな仕事を引き受ける。
- 公開日
- 2003年11月1日(土)
- 監督
- 西谷真一
- 撮影
- 町田博
- 音楽
- 村治佳織
- 製作年
- 2002
- 製作国
- 日本
- 上映時間
- 106
- INTRODUCTION
- 原作は「GO」で直木賞を受賞した金城一紀の短編集「対話篇」に収録された同名小説「花」。これは、他者との対話を通じて自分を見つめるというモチーフに描いた作品だ。突然の動脈瘤によって生きる希望を失いかけた青年と、亡き妻を弔う旅に向かう末期ガンの初老の男。年齢も生き方も違う男二人が一台の車で旅をし、お互いの人生を語り、これからの人生を思う。現代人が忘れかけた大切なことをやさしく映像化しているのだ。監督は本作品で映画監督デビューを果たした西谷真一。映画監督という、長年の夢を実現させるために映画の企画書や自作のテレビ作品を相米慎二へ送り続けていたのだった。そんな西谷監督の思いに、『風花』『刑務所の中』などの製作・若杉正明を始めとして、脚本・奥寺佐渡子(『お引越し』)、また撮影・町田博、照明・木村太朗(『風花』)等、相米作品にに関わったスタッフが集結した。音楽は国内外から高い評価を受け、今、その活躍が最も期待される人気クラシックギタリスト・村治佳織が映画音楽に初挑戦。自らのイメージで選曲そして映像に合わせて演奏した、A.バリオスやG.レゴンディのギターの名曲の数々を演奏している。サラリーマン・野崎を演じるのは『天使の牙』『荒神』『スカイハイ』と映画出演が続く大沢たかお。初老の弁護士に日本映画界の名バイプレイヤー柄本明が存在感のある演技を魅せる。また、鳥越の青年時代に若手俳優の中でもっとも注目を浴びる加瀬亮。他、牧瀬里穂、西田尚美、樋口可南子、南果歩、藤村志保、椎名桔平、仲村トオル、遠藤憲一といった豪華な出演陣が野崎と鳥越の旅を見守るように演じている。
- STORY
- 平凡な毎日を送るサラリーマン、野崎陽一郎(大沢たかお)。彼は突然動脈瘤で倒れた。一刻も早く手術の必要があると、医師(南果歩)から勧められたが、その手術には命の保障が無い上、たとえ成功しても記憶が喪失する可能性があるという。野崎は会社を辞め現実から逃避してしまう。そんなある日、毎朝アパートの前で出くわす男(仲村トオル)からバイトの話が持ち込まれた。依頼主を鹿児島まで連れて行く運転手の仕事だ。その依頼主は、25年の歳月をかけて再審請求をし続けた冤罪事件に勝訴し、最近マスコミを大いに賑やかした弁護士・鳥越弘(柄本明)だった。野崎が指定された待ち合わせ場所で待っていると、白髪混じりの男・鳥越がやってきた。野崎が目的地までの順路を説明すると、鳥越はあえて高速を使わず、国道1号、2号、3号とただひたすら西に下って鹿児島・指宿まで行くようにと指示をした。旅の目的も知らされず、鳥越の指示通り国道で鹿児島へ向うというこのバイトが無意味なものに思えてきた野崎は、車から降りようとした。すると、今まで固く閉ざされていた鳥越の口から、この旅の目的が語られたのだ。それは、25年前に別れた妻が鳥越宛に遺品を残し、鹿児島・指宿のホスピスで先日亡くなったが、妻の顔をすっかり忘れていて、しかも写真などの手がかりは一切残っていない。かつて新婚旅行で通った同じ道を同じ方法で辿ればその妻の顔を思い出すかもしれないと、この旅を決意したというのだった。野崎が質問し、鳥越が答える。やがて鳥越は細い糸を紡ぎだすように、少しずつ記憶を取り戻し始めた。いつしか野崎は恋人と向き合うこと、そして自らの病気と向き合うことの大切さを鳥越の思い出から教えられていた。
- CASTING
- ●大沢たかお 968年3月11日生まれ。東京都出身。 94年にドラマ「君といた夏」で俳優デビュー。主な出演作は、「劇的紀行 深夜特急」シリーズ、「アナザヘヴン~eclipse」、「昔の男」、「アフリカの蹄」、『チンピラ』(96)、『異邦人』(00)、『フィラメント』(02)、『天使の牙』、『スカイハイ』(03)など。 ●柄本明 1948年11月3日生まれ。東京都出身。 74年に自由劇場入り。77年にベンガルらと[東京乾電池]を結成。主な出演作は『ヒポクラテスたち』(80)、『セーラー服と機関銃』(81)、『カンゾー先生』(98)『うなぎ』(97)、『魔界転生』『座頭市』(03)『ドッペルゲンガー』(03)など。92年、『空がこんなに青いわけがない』では監督にも挑戦している。 ●牧瀬里穂 1971年12月17日生まれ。福岡県出身。 90年、相米慎二監督作『東京上空いらっしゃいませ』に主演し、デビュー。この作品と『つぐみ』(90)で日本アカデミー賞優秀主演女優賞・新人賞、ブルーリボン賞新人賞を受賞。 ●樋口可南子 1958年12月13日生まれ 新潟県出身 91年の映画『四万十川』(恩地日出夫監督)で山路ふみ子賞女優賞と毎日映画コンクール田中絹代賞、そして『四万十川』、『陽炎』(91)で第15回アカデミー賞主演女優賞を受賞。
- 映倫
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