大河の一滴
(C)2001「大河の一滴」製作委員会
作家五木寛之が自らのエッセイをベースに、新たな構想のもとに原案を書き上げた感動の人間ドラマ。
生と死、そして愛。古都金沢とロシアを結ぶドラマ展開は、いわば人間五木寛之の原風景といってもいいのではないか。そこから派生してくる、現代のわれわれが見失ってしまおうとしている“人間として大事なもの”へのいとおしさ、大切さを語りたかったのだと思う。それぞれにその意図をもたされたエピソードが、それなりの重さを持ちつつ互いに関連していく。ただその重なりかたに少し未消化な部分があって、意図する思いだけが先走りしてしまったような印象を受ける。ロシアの雄大な自然と、日本の、金沢という繊細な街の組み合わせは実に巧みなのに、その妙味を充分生かしきれていないのが惜しい。実はこの二つの場所が、そもそもの人間の心象を暗示しているのであり、タイトルの意味するところをひそかに表現しているのだと思うから。
いま、この映画を観て日本の人々はなにを感じるのだろうか。特に若い人は。なにかを感じて欲しい、ある種の示唆を含んだ人間賛歌の作品なのだと思う。