大いなる遺産
1817年の冬、テムズ河口に近い沼地で、ピップ少年は続けさまに父と母とを失い、姉とその夫ジョオ・ガージェリイに養われていた。ある夕、ピップは程近い墓に詣でたところ、恐しい脱獄囚に捕えられ、翌早朝、食物を持って来いと、脅かし半分に頼まれた。ピップはその約束を果したが、脱獄囚は密告者と争っている時に追手の兵隊に捕えられた。ピップはジョオと共に逮捕される所を見たが、その囚人は彼に感謝している様子であった。その後、ピップは近くの大邸宅に住んでいる狂女といううわさのあるハヴィシャム嬢から遊び相手として呼ばれた。そこには彼と同年の養女エステラという美少女がいて、彼を案内した。誇り高く彼を見下していることは分ったが、少年ながら一目見てピップは彼女に心ひかれた。