残雪
東京の出版社に勤務する八坂周子は多忙ななかでも、長野支社に転勤した恋人、秋山貴広への週一度の電話を欠かさない。しかしいつ頃からか、彼の様子に変化が現れる。直接訪ねようと電車に飛び乗り、まだ雪の残る道をたどってきた周子を迎えたのは、憔悴しきった貴広だった。それから1年。あの日以来、彼と会わなくなった周子の心にはわだかまりが残っている。元気のない彼女をカメラマンの響研一が気遣う。しばしば無言の留守番電話が入るようになったある夜、受話器を取ってみると相手は貴広。周子は、会社を辞めて東京で新しい職に就いていた彼と再会するが……。