第73回ベルリン国際映画祭にて史上最年少で主演俳優賞を受賞したスペイン映画『ミツバチと私』より、村山輝星、関根麻里、シシド・カフカ、ゆうたろう、サトシン(絵本作家)をはじめとする各界の著名人からコメントが到着した。
本作は、自分の性別に悩み《本当の自分》を探す8歳の主人公と、葛藤しながらも寄り添う家族の物語。ベルリン国際映画祭では、2020年に男優賞・女優賞が廃止され、性別区分のない主演俳優賞、助演俳優賞が新設されました。主演のソフィア・オテロは、まさにそれを体現する形で、史上最年少の9歳にして最優秀主演俳優賞受賞を成し遂げた。ソフィア・オテロは、約500人の中からオーディションで選ばれた新人で、今回が映画初出演となり、子供が抱える不安や心の機微を繊細に演じる様子は、『ミツバチのささやき』(73)のアナ・トレントを想起させる。
村山輝星(俳優・タレント)
私は私。ありのままの私を受け入れて欲しい。ココの心の叫びが容赦なく私にも突き刺さる。
あなたが苦しんでいるのは、あなたの周りが固定概念に縛られているから。
ミツバチが本能のままに生きているように、あなたも内なる心に正直に生きて良いと思う。
そうよ、ルチア、自分探しを続けるあなたを私は応援しています。
関根麻里(タレント)
自分のアイデンティティーへの葛藤や、繊細な表現を8歳にして演じた主人公に惹き込まれました。
主人公だけでなく家族も一緒に悩み、そして成長していく姿にとても感動しました。
シシド・カフカ(ミュージシャン・女優)
その表情に その仕草に
心の機微が表れる度
胸が締め付けられた
そして最後の母を見つめる瞳に 救われた
それぞれの視点
それぞれの正義
それぞれの葛藤
無意識の中に潜む私のそれは
誰かを否定するのだろうか
ゆうたろう(俳優)
自分が思うありのままの姿で在りたいココと、普通という枠の中に居て欲しい母親、どちらの正義も伝わって来てココがもがき苦しむ姿が見ていて心が窮屈になりました。対照的にこの物語のキーになってくるミツバチと湖での描かれ方は凄く伸び伸びとしたココがそこに居て、等身大の姿がまんま映し出されていて何とも愛おしかったです。
8歳で色んな目で見て、視られて、比べて、沢山の感情を抱えて。何も変わらず美しく生きていて欲しい。
春名風花(声優・舞台女優)
蜜蝋みたいに身体も溶かせたらいいのに!
“名前を呼ばないで。”と子供に言われたら、貴方はどう思いますか?
世論や医学が進化しても、本人の望みを聞けるのは自我を得てからのこと。何年かはきっと、確実に違和感に苦しんでしまう。 「なんにでもなれるわ。」 母はどんな思いでこの言葉を発したのだろう。 人を理解するって難しい。 でも、向き合おうとするその過程こそが、美しい。 これは、世界が”彼女”を見つけてあげるまでの物語。
サトシン(絵本作家)
絵本「わたしはあかねこ」を創作して以来(絵本作家でお話書いてます)、トランスジェンダーさんや関係の皆さんとお会いしたり連絡いただくこともまあまああり、そんなことから自分なりに興味を持っての鑑賞。自分自身も幼少期から変わった子、変な子と思われることもあっただけに、モヤモヤしたりハッとするところもあったが、主人公と迷いながらも受け入れていく家族の描かれ方にリアルを感じつつ共感。どんなパーソナリティであっても自分らしく暮らせる社会であることの大切さをあらためて感じた。拙著的に言えば、「すべての人が、それぞれに、心にあかねこを飼っている」のだから。
呉美保(映画監督)
シンプルでいて綿密、繊細でいて緩急もある。
全方位張り巡らされた登場人物たちの多様な感情。
ソラグレン監督の、家族と社会に対する思いを凝らした柔らかな演出が好きです。
伊藤さとり(映画パーソナリティ)
自分探しをする幼き命に、家族はどう介入して行けばいいのか。
この永遠のテーマを切り口に、美しい自然の中でゆっくりと確信するあどけない横顔の美しさにハッとさせられた。自分は本当に、大切な命を理解しているか。
個ではなく家族でジェンダーを考える更に踏み込んだ水面のような作品だ。
よしひろまさみち(映画ライター)
大人が居心地いいと感じるフツーは、子どもにとってもそうなのか? 否。
ありのままに生きることを阻害する権利は誰にもない。
アイトールの表情、怒り、モヤモヤを見れば、それが一発で明白になる。
鈴木みのり(作家)
トランスジェンダーやジェンダーに揺らぎのある子どもを描いた貴重な作品であるが、同時にさまざまな女性たちの生き方、仕事、関係性にも緩やかな光を当てる。さらに、マイノリティの困難を、「誰だってたいへん」というクリシェには埋もれさせず、しかし縦横に舞う“20,000匹のハチ”のひとつに位置づける絶妙なストーリーテリングに舌を巻く。映画も、現実のマイノリティの存在も、狭量な誰かの教科書になる必要はない。そこに生きている誰かの存在を、まずはじっと見つめてほしい。
児玉美月(映画文筆家)
「死んだら生まれ変わって女の子になれるかな?」とまだ幼い子が聞く。
「死ななくていい。あなたはすでに女の子よ。しかも誰よりもかわいい」と問われた大人は答える。こんなふうに包み込む大人がこの世界に増えたなら、きっと救われる命がたくさんあるだろう。
また、数多くの人気イラストレーターを輩出するコンペティション「ザ・チョイス」入選の経歴を持ち、書籍、雑誌などエディトリアルを中心に活躍するイラストレーターの原倫子からイラストが到着。休暇でスペイン・バスク地方へやってきた主人公のアイトールが、祖母に連れられご近所さんに「孫娘?」と声をかけられ少し嬉しそうな笑みを浮かべる情景を鮮やかに描写している。さらに、国内外での展示のほか、イラストや文章、選書など、分野の枠を超えて表現活動をするイラストレーターの柊有花からも、カーニバルの人魚の衣装を身につけベッドに横たわる、まるで海の底に沈んでいるようなアイトールの心情を表した美しい青が印象的なイラストが届いた。
そして、エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン監督のインタビュー動画が解禁。子供のジェンダーアイデンティティというテーマと、当事者家族の会への取材を重ねて得られた当人を取り巻く人々の重要性を描いた本作への思いを語る。
■『ミツバチと私』エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン監督からメッセ―ジ
1.5(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開