緒方貴臣監督(『子宮に沈める』、『飢えたライオン』)が、伊礼姫奈(「推しが武道館いってくれたら死ぬ」)、筒井真理子(『淵に立つ』、『よこがお』、『波紋』)らを迎え、「義足は障がいの象徴」とネガティブに捉えていた主人公の義足のモデルやそのマネージャーが、ポジティブに捉えられるようになるまでの心の変化を描く『シンデレラガール』。11月18日(土)より全国順次公開されるのを前に、監督の分身である主人公のマネージャー・唯役の辻千恵のオフィシャルインタビューが解禁となった。
12歳の時に病気で⽚脚を切断した音羽。その後も⼊退院を繰り返し、中学校の卒業式にも参加できなかった。そんな⾳⽻のために、クラスメイトたちがサプライズの卒業式を病院の屋上でして、その動画がSNSで話題になり、音羽にモデルのオファーが舞い込む。義⾜の⼥⼦⾼校⽣モデルという特異性もあり、一時的に注⽬されるも、その後のモデルとしての仕事は義⾜を隠したものばかりだった。⼀⽅、マネージャー・唯は、⾳⽻と一緒に義足のファッションブランドで「義足を障がいの象徴でなく、個性として捉えてほしい」という理念を聞き、⼼を動かされる。義⾜をもっと押し出していこうと決める二人。やがてファッションショーに出演できるチャンスがやってくるが…。
映画『シンデレラガール』に出演・参加した俳優を追ったドキュメンタリー『私が私である場所』でも本作のオーディションの様子が収められていますが、オーディションにはどのような思いで臨んだんですか?
オーディションは、(看護師の)桜役で受けさせて頂きました病室にずっといる音羽が外の世界やお化粧や恋愛の話を聞く秘密の相手という雰囲気が出せればいいなと思って演じました。
看護師役でオーディションを受けたら、義足モデル・音羽のマネージャー・唯役に決まり、どう思いましたか?
オーディションが自分の中では全然うまくいかなかったのに、なぜか唯役を頂けて、不思議な気持ちでした。台本を読んだら、唯は音羽が色んな段階を踏んでいく中で近くにいる存在で、とても大事な役だろうなと思いました。
自分にもマネージャーさんという存在がいて、こんなに近いのに、近くにいる人のことをあまり考えられていなかったんじゃないかなとか、今までの自分のことも色々と考えました。モデルを始めたきっかけのお仕事をしていた時から自分のことを知っている方など、色んな方にお話しを聞く作業をしました。
監督からは映画のメッセージや役についてなど、何か話はありましたか?
本読みの時に、「自分の分身だ、だから唯の衣装も黒いんだよ」と仰っていて、とても重要な役なんだと知り、身が引き締まりました。監督の分身ということは自分を通して演じているけれど、監督を通して演じているということにもなるのかなと思って、責任を感じました。
義足や脚をなくした方、その周りの方にお会いする機会はあったのでしょうか?
クランクイン前に会わせて頂きました。義足を外した状態を見せて頂いたり、義足になった経緯や、普段の過ごし方などいろいろなお話を伺いました。お会いする前までは、例えばタクシーでのシーンの、「義足は見せない、見せない」というセリフを、セリフの一つとして捉えていたんですけれど、お会いして直接お話をしたら、音羽にそんなこと言えないなと思って、葛藤が生まれて。それが病室のシーンにも繋がったので、お会いできてよかったと思います。義足モデルの方が現実にいらっしゃるので、コンタクトを取って、お話をお伺いしようとしていたんですけれど、監督から「それは一旦やめて、辻さんが考えてください」と仰った意味も後からわかりました。
「義足を障がいの象徴ではなく、個性として捉えてほしい」というセリフがありますが、ファッショナブルな義足を実際に見て、どう思いましたか?
キラキラした義足をつけているのを見て、お洋服も相まって、偏見とか一切なく、本当にかっこいいなと思いました。本読みの時に監督に見て欲しいと言われた映像があったんですが、それを見たらカッコよくて、ヒーローのようでした。あの映像と音羽がつけているのを見たら、それは、強みでしかないよな、と思いました。弱いところが一切なくて、それを知らなかった自分を恥ずかしくなりました。
工房のシーンで、「義足を障害の象徴ではなく、個性として捉えてほしい」というセリフは、音羽にではなく、唯に向けて言われていて、唯の心が動くシーンだと思いましたが、そのシーンは演じていていかがでしたか?
的を射た言葉ですよね。音羽がファッショナブルな義足をつけている姿を見て、今までただの仕事として業務をこなしていた自分の考えが覆されて、エレベーターでぽろっと、言おうと思っていないけれど言っちゃったというところにつながっていると思います。
義足モデル役の伊礼姫奈さんと共演していかがでしたか?
休憩時間にたくさんお話しするとかすごくコミュニケーションをとったわけじゃないんです。自分が引っ張らないといけなかったのに、音羽に全部引っ張ってもらっていたなと思います。伊礼さんは、10代の方とは感じさせないくらい、待ち時間も静かに座っていらっしゃったんです。それも音羽に見えてきて、とてもかっこよく、ついていきたいと思いました。
デザイナー役の筒井真理子さんとのシーンの撮影エピソードはありますか?
廊下のシーンは、そんなに言葉を交わしていないんですけれど、衣装やヘアメイクにもこだわっていらっしゃるのを感じていて、絵の構図にもこだわっていらっしゃるのが聞こえてきて、「こうあるべきだよな」と教わることが多かったです。
本作の見どころはどこだと思いますか?
今までの障がい者が主人公の映画だと、主人公に「頑張れ」と応援したくなる映画が多いと思うんですけれど、音羽はそんなことを言わなくても強いし、凛としているし、こちらが主人公に手を引っ張ってもらっているというとても新しい形の映画です。「こう生きていこう」だとか新しいことに気付かされる映画だと思います。
読者にメッセージをお願いします。
私は、「立ち上がれシンデレラ。あなたには魔法も白馬の王子様も必要ない」というキャッチコピーを読んだ時にドキッとしてしまったんですけれど、タイトルは『シンデレラガール』なので、その相反するイメージを自分の目で確かめて解決して欲しいです。撮影監督の根岸(憲⼀)さんが撮られる映像が美しいですし、松葉杖のコツコツという音は、家でテレビで見るのとは絶対に違うと思うので、ぜひ映画館でご覧ください。
11月18日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開